吉村昭 『熊撃ち』












吉村昭 『熊撃ち』(ちくま文庫) 読了




昨今、何かと話題のクマさん

(それにしても 熊ってあんなに獰猛な野獣なのに(特に羆(ヒグマ))
 何でアニメやキャラクターだとあんなに可愛く描かれるんだろう?笑
 やっぱディズニーのプーさんのせい?
 いや、もっと前の「森のくまさん」の童謡からしてあまり凶暴さは伝わって来ないし
 金太郎も熊と相撲取ってたしな 笑)


そんな熊を題材にした短編集



もちろん熊を斃(たお)す側である「熊撃ち」の視点で

7つの短編の内、1つだけ本州のツキノワグマで、他はすべて羆のお話



しかも、そこは吉村昭先生

すべて当事者から話を聞いて書いた "実話"



とは言え、むやみやたらに羆の凶暴さを描くのではなく

「熊撃ち」の人たちの、孤独を好むような人間性が伝わってきて
とても面白かった


(ちょっと取っつきにくい職人気質の寡黙な方々で
 イメージ的には 高倉健のあの感じに近いかな)













お、なるほど!



文庫版あとがきによると

羆と人間との闘いを描いた
氏のロングセラーの名作『羆嵐』(2021/3/22 吉村昭『羆嵐(くまあらし)』
よりも先にこの短編集が生まれてたのか!

この『熊撃ち』の副産物で生まれたのが
『羆嵐』ということか

てっきり『羆嵐』のヒットで出された短編集かと思った


しかも、この羆ものを執筆していた時は
取材のために繰り返す旅の疲れもあり
なかなかヘヴィーだったようで
寝ていても羆に襲われる夢を見てうなされるほどだったとか




吉村先生って

わりとエッセイなんかを読んでいると
大人になって麻疹に怯えるエピソードなどしかり

"ビビリ"と言っては失礼極まりないけれど(笑)
臆病さをけっこう持ち合わせている方で



もちろんそこは

若い時の、肺結核による実験的な肋骨切除手術体験であったり
大戦末期の空襲被害であったり

生死を分かつような実体験から来るものであったりするのだろうけれど



でも、逆に

そういう人だからこそ
小説の中での、時にグロテスクさを伴うような
恐怖や畏怖を感じさせる生き死にの描写も
ドキュメント的に、冷静なタッチで書くことが出来るのだろう

臆病さも持たず、恐怖も感じないような人だったら
畏(おそ)れを抱かせるような描写は書けないだろうから




怖さを感じないような人には、怖さは書けない

シンプルで当たり前の話ではあるけど、そんなことを思った





次はどの吉村昭作品を読もうかしらん



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