吉村昭『破獄』読破










2023/9/26のブログで紹介していた
吉村昭先生の『破獄』

先日ようやく読破いたしました!



えらい時間かかったな~(笑)

っていうか読み始めたら
一気に読み終えることができたんだけれど

約1週間後に控えた"網走オホーツク旅"を目の前にして
行く前には読んでおきたい♪と火が付いたわけであります(笑)







驚くべき手口に、大胆な実行力で、四回の「脱獄」成功。犯罪史上に残る無期刑囚を描いた吉村記録文学・畢生の大傑作。
昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。
― 新潮社サイト紹介文より




『破獄』(はごく)は、吉村昭の長編小説。雑誌『世界』に1982年から1983年に連載、岩波書店より1983年11月24日に刊行された。4度の脱獄を繰り返した実在の受刑者・白鳥由栄をモデルに、脱獄の常習犯である主人公とそれを防ごうとする刑務官たちとの闘いを描いた犯罪小説である。第36回読売文学賞(小説部門)、第35回芸術選奨文部大臣賞(文学部門)受賞作品。
― Wikipeidaより







網走刑務所もその脱獄の舞台として登場する、
実在の"脱獄王"白鳥由栄(しらとりよしえ)をモデルにした、
"刑務所"という視点から、戦中・戦後の混乱期の社会を描き出した
まさに吉村昭の真骨頂といった感じの記録文学の大作

登場人物はおそらくみんな別名になっているものの、
実際に白鳥由栄と接した(ある意味"対決した")関係者から
吉村先生自身が聞いた話をもとにしているので
そりゃあ綿密なわけです


多くの太平洋戦争ものの作品って
描かれても軍隊や戦場、国民の被害・社会情勢ぐらいまでで、

そこに刑務所目線・囚人目線で描こうと決意した吉村先生の
慧眼っぷりが見て取れる


当時のひもじい国民の配給食よりも
質・量ともに良いものを囚人たちが食べてた
(場合によっては、看守たちより囚人の方が良い食事)

なんてこの本を読むまで
思ったこともなかったもんね






映画さながらの脱獄シーンや脱獄犯との駆け引き、
そして予想してなかった形のラストの展開など
是非実際に読んでその世界に浸って欲しいので
ここでは詳しく紹介はいたしませんが(笑)

そのリアルな世情描写に触れて、思ったことを一つだけ




それは、

現代日本ではほぼ聞くことがなくなった
"栄養失調"という社会問題からの想起




社会における"幸福度"の設定って、色々あるんだろうし
"幸福"の追求には際限がないんだろうけれども


「栄養失調で亡くなる人がいない」


それを社会の幸福のひとつの基準にしてもいいのかもしれない、と思った

(もちろん現代においても、虐待や極度の貧困などで
 厳密に言うと全くゼロではないんだろうけれど
 それを見捨てて助けない、お粗末な社会福祉制度ってわけでもない)



今の社会で "栄養失調で死ぬ" なんて
虐待のニュース以外ではほぼ聞くことはないけれど

太平洋戦争中や終戦直後
一般国民においても、刑務所の囚人においても
食糧難により"栄養失調で死ぬ"人がかなりいた


今でこそ、スーパーやコンビニやネットのおかげで、多少貧乏でも
本人が意識さえすれば "栄養に偏りのない食事" を取ることは難しくないが
当時はそれすら出来ないことは普通だったし

また、戦争の影響もあり食料の輸入環境も整備されていなかったし
今よりはるかに、農作物は天候に左右され、凶作は国民の胃袋を直撃した


水木先生のよく言われていた
「売れない漫画家=餓死ですよ!」的な 当時の話も
やはり、決して大袈裟に言っているネタではなかったのだ




もちろんそれは "一つの面から" だけど

「栄養失調のない社会」=「幸福な社会」

と捉えてもいいんじゃないか?
これはすでに一つのゴールなんじゃないか?

そして、
みんなはそのことを忘れているんじゃないか?


そんなことを思った次第








あ、Wikipedia見てたら


>1985年と2017年にテレビドラマ化された。

ってあって、

しかも2017年版(テレビ東京)は
「主演:ビートたけし 出演:山田孝之」だ!

雪の中を逃亡するシーンがイヤで(笑)
脱獄犯役を断っていたビートたけしが看守役
代わりに山田孝之が脱獄犯役


観たいな(笑)







ほんでもって


網走監獄の博物館には
その白鳥由栄の脱獄シーンを再現した展示があるらしいので(笑)

今度行ったら観てみようと思ってます♪



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